厳重なセキュリティーをクリアして待合室へと案内されると
この地域で親しまれている焼菓子と甘いお茶を頂く事になった。

大臣の到着を待つ時間は、日常の舞台で体感している感覚とはまた違った緊張感である
ここはインドネシア共和国の首都、ジャカルタの青年スポーツ省
ちなみに私の髪型は仕事柄とは言え、長髪で茶色のパーマあたま…
これでは場違いではなかろうかと渡航する前に美容師さんと相談して
カットする事に決めたのでした。

日本武道代表団 表敬訪問

さて、なぜその様な事態になっているかと申しますと今回はマジックのお仕事ではなく、
日本武道館 及び外務省とスポーツ庁からの推薦を頂き、武道の日本代表団の一員として参加致しておりました。

日本とインドネシアは大変良好な関係を保っており
昨年は国交の樹立から60周年を迎えました。その記念事業の一環として現代武道9種目
(柔道、空手道、合気道、剣道、相撲、少林寺拳法、弓道、なぎなた、銃剣道)
古武道3流派(天真正伝香取神道流剣術、神道夢想流杖術、天神真楊流柔術)からなる
代表が両国の友好親善に寄与する為に国から派遣される事業であります。

青年スポーツ省

初日はアトマジャヤ大学にて講演と演武を行うグループと高村正彦 団長を筆頭に、
各流派代表者によるイマム・ナフラウィ大臣への表敬訪問がありました。
日本はインドネシアに対してインフラへ設備に大きくかかわっており
その幅広い活動に大変感謝していると御礼の言葉を頂戴する事が出来ました。
数メートル先で会話をされている高村団長は軟らかな語り口でありながら
日本という責任を背負った威厳ある姿には大変感銘をうける事となった。
やはり、この場の空気は髪型を整えて来た事は大正解だった様でございます。

ゲロラ・ブン・カルロ・バスケットボールホール

インドネシアではプンチャック・シラットといわれる武術が盛んであります。
2018年のアジア大会では初の正式種目となり、金メダルも多数獲得した模様で
表敬訪問の際にはオリンピックでもシラットを公開競技に出来ないだろうかと
通訳を通して話されていた様です。
そのシラットという武術は皆様はご存知でしょうか?
私は数日後に開催された武道交流会で白髪交じりの初老と組み合ったのですが
ゆっくりと差し出されたご老人の手首を握ると
まるで重い岩を押し付けられた様な重圧を感じ身体が傾いてしまいました。
不用意に握った事もありますが、いわゆる崩しの原理が巧みに使われおりました。
日本に限らず世界には様々な武術や達人がいるものだと感心してしまいます。
その後、老人は有名なシラットの師範であると聞かされて納得…

柔道

柔道の試合形式の演武では技が極まる度に会場から大きな歓声が沸き起こっております。
賛否両論あるでしょうが、私共の古流と呼称される武道も形式だけではなく
観覧されている方々がもっと興味をもってもらう工夫が必要である事を感じます。
若い修行者が減ってしまえば、遅かれ早かれ流派は消滅してしまうでしょう
現に明治後期から戦後にかけての資料を調べてみると
おびただしい数の流派が、活字の記録だけを残して無くなってしまっている。
各団体の演武を拝見しながら、私共も変わらなければと思った瞬間でもありました。

日本代表団

柔道の日本代表60キロ級で活躍されていた江種辰明先生(中央)からは
我々が地道に研究してきた理合いや形の重要性を高く評価して頂いた。
講道館柔道と関わりの深い我々とっては、必要とされる事は嬉しいかぎりである。
また他国が主導で作られてしまうJUDO国際ルールの問題点
日本がもっと主導しなければ柔道の理念から遠のいてしまう理由など
世界トップクラスの強豪達と戦ってきた方の言葉はとても重く説得力を感じる
お酒をかたむけながら貴重な話を聞かせて頂きました。

北海道県警函館方面本部で指導をされている菅太誠先生(左側)は
絞め技の性質の違いなど、古流技法に大きな関心を持って頂いた。
たまに函館方面も訪ねている事をお話すると、是非出稽古にとのお誘いを頂く
しかし…道警と聞いてすぐに連想してしまうのが、増田俊也氏のノンフィクション小説
七帝柔道記 にある想像を絶する過酷な稽古のくだりであります。
私は舞台の仕事もあるので、五体満足で帰れるだろうかと…質問をすると
菅先生は少年部を指導している様で「ほっ」と安堵の気持ちが生まれたました。
いつか旅でお伺いした際には、稽古をして頂くと約束を交わし乾杯をしました。

ジャカルタ

今回の国際派遣を通じて各武道の先生方との交流を持てた事は
我々の流派にとって何事にも代えられない糧となりました。
そして日本・インドネシアの国交樹立60周年の節目としての行事
2300名ものお客様が来場され日本武道への関心の高さを知る事が出来ました。

己の為に稽古を重ねてきた武道が国際親善の場で活かされるなど
微塵も考えた事はありませんでしたが
人様のお役に立てる事がわかった以上は、更なる稽古と研究を続けるという
目標が明確になった旅となりました。

飛鳥兇亘魅泪螢▲塀島を通過中でありましたが
ブログを書いているうちに気が付けば日本時間も新年を迎えておりました。
本年も昨年同様、旅が続く日々かと思いますが
まだまだ 成し遂げていない事に対しても積極的に挑む一年を目指したいと思います。
それでは、本年も皆様にとって素晴らしい年になります様に…